なんやかんやで出るっぽいのでサンプルページ。わーわー。

 三月十四日、第七回 博麗神社例大祭は『と21b』『Ask』(=朝までゴーヤ)にて、
 東方Project二次創作SS本「幻想追走モラトリアム」(全84P、うち本編73P)を一冊五百円にて頒布します。
 本編・裏表紙担当は新戸、表紙・ページデザイン担当はふか、といった感じです。
 目印はこちらの魅力的な表紙ー。

   

 ・・・背や裏面は見てのお楽しみということで。
 以下、本文サンプルー。




 それが起きたのは八月六日――暑さ厳しい夏の日のことだった。
「……っ」
 館内の清掃中、不意に足元が崩れるような感覚に襲われた十六夜咲夜は、重力に逆らうこと
も出来ぬままその場に膝をついた。激務に体が耐えかねたのか、それとも夏風邪でもひいたの
か。不規則な生活を省みる間も無く、落下感と五感への刺激が咲夜を襲った。
 眼球に染み入る赤、鼻腔を刺激するむせ返るような青臭さ、肌を舐める湿った冷気、そして、
耳朶を打つ蝉の声であった。瞼を閉じ、こめかみに手を添え、それらを耐え忍ぼうとしていた
咲夜は、
「――え?」
 しかし、最後の一つ、蝉の声に違和感を覚えて瞼を開いた。気付けば落下感は既に無く、平
衡感覚も全く失われていなかった。同時に、己の膝を支えるものが、滑らかな大石ではなく
ざらついた石畳であったことを知る。見上げれば、沈む夕日が網膜を焼く。
「……なに、これ」
 己の周囲に四つの影を認め、しかし、誰にともなく咲夜は呟いた。
 応じる声は、無い。

     ●

「どうやらここは博麗神社のようね」
 影の一つ、八意永琳が、そう言うに足る確信を得たのだろう、無言の静寂を破り、言った。
「いくらなんでも、ウチの神社はここまでボロくないわよ? 最近新築になったところだし」
 それに反応したのは博麗霊夢だった。霊夢もまた、この場に放り出された一人である。
「大体、人が住んでたら廃神社同然になるはずないじゃない!」
 霊夢がそう言いたくなるのも当然だろう。荒れに荒れた境内は石畳の隙間に草が生え、今に
も崩れ落ちそうな神社に至っては、柱に蔦が絡まり屋根瓦は数えるほどしかなく、障子に至っ
ては骨子が残るばかりなのだから。
「人が居ないからこうなったんでしょう? 要するに」
 が、永琳はそれが当然であるかのように切り返し、言い放った。
「ここは外の博麗神社。私たち、どうやら追い出されちゃったみたいね」




 大体こんな感じのお話ですよー、ということで、よろしくお願いいたします。




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